僕がなぜ「ピーコックバグ」を選んだのか?というものです。
何、このフライ? |
ご了解いただいたので、コチラの投稿でその時のフライを選ぶプロセスを再現してみたいと思います。
まず当日の状況をなるべく正確に思い出してみます。
天気は曇り時々晴れ。ウェーダーを履いて歩いているからか、日中は寒いと感じることは無かったです。
気温は分からないのですが防寒のために持ってきていたレインジャケットは脱いでいました。
午後2時(釣りはじめた時刻)の表面水温は11.5℃くらいで、時折風も吹きましたが悪いコンディションではないと思います。
ただし僕が釣りをしている間にライズを見ることは無かったですし、ハッチも非常に少ないものでした。
時折ユスリカが散見できる程度で、一度だけ小さなカゲロウらしきものも見ましたが、それだけです。
僕が思っているほどには水生昆虫は活発ではなかったようです。
フェザントテイル・レッドスピナー Pheasant tail red spinner (#16). 細身のボディでシルエットの小さなドライフライは僕にとって春先の定番ドライフライです。 |
それでも開始30分ほどはドライフライを投げつつ釣り上がりました。
この時使っていたフライは、こういった春先の低水温期に効果的な(細身でシルエットの小さい)フェザントテイル・レッドスピナーです。
しかし残念ながら何の反応も無いので、次にフェザントテール・ニンフに交換しました。サイズは14番です。
これは深い場所を探ると言うよりも、それまでドライフライを投げていたポイントの水面下を探ると言う意味合いが大きいです。小さな渓川ですから平均的な水深は30cmほどです。ストライク・インジケーターをつけ、フライまでの距離を50cmほどとしました。
繰り返しになりますが、川底へ沈めるのではなく、ニンフが流れを漂うように、ドライフライと同じように流します。
フェザントテイル・ニンフ Pheasant tail nymph (#14) |
ところがはやりストライク(当り)は無く、魚が水中を走る影も見えません。
こうなると魚は川底の石の影やエグレの下に隠れてしまっているのではないかと想像できます。
水温もそれほど低くないので、僕の前に先行者が釣っていたと言う可能性が高いですね。
そんなことを考えているうちに辿り着いたのが、下の写真のポイントです。
いかにも釣れそうですよね。
実際、ここは実績のあるポイントで、釣れても釣れなくてもここでは何らかの魚の反応(当たりがあったり、逃げる影が確認できたり・・・)が見られます。
経験的にこのポイントで全く何の反応も無かったら、その日はこの川で釣れる魚はいないと考えて良いくらいです(本当ですよ!)。
ま、それくらい小さな渓流だということです。
さて、そこでこのポイントを前にして僕はもう一度フライを結び変えました。
迷った末に選んだのは「ピーコックバグ」です。
何のフライと迷ったと思いますか?
もう一つの候補はBHフェザントテイル・ニンフでした。
なぜだと思いますか?
魚の反応が全くないこの状況下での、僕の想像は「魚たちは隠れてしまっている」ということです。
隠れる場所としては、川底、岸のえぐれ、岩(大石)の隙間、そして落ち込み(泡)の下などです。
そういう場所にいる魚にエサ(フライ)を届けるには当然今までの様な表層から中層を流す方法では無理で、またよりアピールする何らかの方法が必要だと考えました。
ここは考え方として案外重要なところです。
魚の反応が悪い時はエサ(フライ)をより小さなものへと変更しがちですが、それは魚がフライを認識した上で食いつかないときの対処法です。
例えばドライフライの後を付いてくるのに、ユーターンして帰ってしまうようなときはフライをサイズダウンさせることは効果的な方法の一つと言えます。
しかし川底に張り付いてエサを追う気配が無いような魚をブラインド(目視できない状態)で狙う場合、僕はまず魚にフライを認識させるべくアピールする方が重要だと考えています。
これでBHフェザントテイル・ニンフが候補に挙がった理由がお分かりかと思います。
ビーズヘッドのきらめき、インパクトをプラスアルファの要素と考えたわけです。
さらに、もしもより深く早く沈める必要がある場合にはスプリットショット(ガン玉オモリ)をティペットに付け足すことも考えられます。
ピーコックバグ Peacock bug (#14). ピーコックハールのボディとシェルバックは非常に良く水中できらめき、 そのアピールの高さは想像以上だと考えられます。 |
しかし僕は結局ピーコックバグ(#14)を選びました。
これはフライボックスを開いた時の直感なので、さらに「なぜか?」と問うのはなかなか答えが難しいのですが、一つにはそれまでやはりフェザントテール・ニンフを使っていたので、ちょっと目先を変えてみたかったということもあったかもしれません。
さらに言うと、魚のコンディション、行動が水生昆虫のハッチと連動している状況ではないので、いわゆる「ニンフ」(水生昆虫の幼虫)に限定せず別の見え方がするフライを試したかったということも言えるでしょうか。
これらよりももっとヘビーウェイトのフライもフライボックスには当然入っていたのですが、このポイントの水深は落ち込みとは言え50cm程度なので重すぎても流しにくくなるという判断もありました。
もちろんヘビーウェイトのニンフを使い、ロッドを立ててリーダーをピンと張った状態の脈釣り風ニンフィングをする方法もありますが、この時すでにストライク・インジケーターをつけていたのでそのままルースニングの方法(ウキ釣り風)で釣り続けることにしました。
ただしインジケーターとフライとの間隔をそれまでより広げ、70cm程度としています。
狙い方としては上の写真の番号順にフライをキャスティングしていきました。
- まずは落ち込みからやや離れた場所にある水底の大石周りを流す。この日の状況では可能性は低いのですが、こういう手前のポイントを見逃すと、魚がヒュッと逃げたりすることもあるので一応チェックするべきです。もちろん水中にある大きな石の影は魚が付くポイントです。
- 手前の小さめの落ち込みと中央の落ち込みとの間の「鏡」の部分を探る。
- 右側の小さな落ち込みを探る。落ち込み直下の泡の中へもキャストする。
- 中央の落ち込み周りと、同じく泡の仲も探る。
- 同様に一番奥の落ち込みも丁寧に探る。結果的にこの最後の落ち込みの泡の中でヒットしました。
この日のように魚がアクティブにエサを追う状況に無い時は特に大切なことなのですが、ポイントに近づき過ぎないようにしつつ、しかし丁寧に探らなければなりません。
またヒットしたのが一番奥の、最も釣りにくいポイントだったことを考えると、やはり先行者が釣った後だったのかもしれませんね。
ちなみにこういった落ち込みまわりの狙い方はニンフであってもドライフライであっても基本は一緒です。
ドライフライの場合は特に、②の部分や④と⑤の間のポイント、速い流れの脇にあるフラットな部分、いわゆる「鏡」と呼ばれる部分を丁寧に狙うことが大切です。
今回は「ピーコックバグ」という地味(笑、いや実際は怪しく輝く魅力的なフライです)なフライを選ぶプロセスとあわせて、渓流の一級ポイントである落ち込み周りを釣るヒントを紹介してみました。
蛇足ですが、僕はこの「ハウツー・フライフィッシング!」の中で、ドライフライでもニンフでもイマージャーでも、周りの環境や魚の状態に応じてフライを選ぶのであって、フライそのものが独立して存在しているわけではないということを何度も書いているつもりです。
この日のヒットフライは「ピーコックバグ」でしたが、同じような狙い方・流し方ができるフライはほかにもあったかもしれません。
重要なことは「ピーコックバグ」が釣れるフライなのではなくて(いや、釣れるフライですが!笑)、その時々の環境と釣り方に応じたフライを選ぶということです。
これはビギナーにとってはもちろん、アドバンスド・アングラーにとっても(もちろん僕自身にとっても)定まった答えの無い非常に難しいパズルと言えます。
この悩ましい世界を是非心行くまで楽しんでください!
That's fly fishing!
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