ここではフライライン全般について一通り説明したいと思います。
婚姻色が美しい夏のオイカワ釣り。 清流の小物釣りには3番ウェイト以下のタックルが楽しい。 |
【ラインウェイトについて】
すでにお伝えした通り、フライラインは「アフトマ AFTMA (American Fishing Tackle Manufacture Association)」による国際規格によってラインウェイト及びラインテーパーの表記方法が決まっています。
まずラインウェイトですが、これはフライライン全体の重さを問題にしているわけではありません。
フライラインのうち先端から30フィート(約9m)の部分についての重さを規定しています。
この時、重さを量る単位として用いられているのがかつて小麦の計測に用いられていた「グレイン Grains」(1グレイン≒6.48グラム)です。
ラインウェイトに対するグレイン量は以下の通りとなります。
・1番ウェイト - 60グレイン
・2番ウェイト - 80グレイン
・3番ウェイト - 100グレイン
・4番ウェイト - 120グレイン
・5番ウェイト - 140グレイン
・6番ウェイト - 160グレイン
・7番ウェイト - 185グレイン
・8番ウェイト - 210グレイン
・9番ウェイト - 240グレイン
・10番ウェイト - 280グレイン
・11番ウェイト - 330グレイン
・12番ウェイト - 380グレイン
一般的にはグレインと言う重さの単位を意識することはないのですが、フライラインを自分の好み・用途に合わせてカスタマイズする場合には目安とするようです。
ここで再度フィールド及び対象魚ごとのお勧めラインウェイトを紹介しておきます(シングルハンドロッドの場合)。
・清流の小魚(オイカワ、ウグイ): 1~3番ウェイト
・渓流トラウト(イワナ、ヤマメ、ニジマス他): 3~5番ウェイト(場合によって2番以下も)
・本流、湖のトラウトやブラックバス: 5番~9番ウェイト
・サーモンフィッシング: 8番ウェイト以上
・ライトソルト(ボートシーバス、シャローウェーディング): 8番~10番ウェイト
・沖合いの回遊魚(シイラ、カツオ他): (最低10番ウェイト)12番ウェイト以上
渓流の鱒釣り。 釣り味重視なら3番ウェイト、キャスティング優先なら5番ウェイトで。 |
【ラインテーパーについて】
フライラインのテーパーデザインには大きく3つ(レベルライン、ダブルテーパーライン、ウェイトフォワードライン)に分けることができます。
- レベルライン(記号:L - Level): 単体で用いられることは余りありませんがロングキャストを必要としない小さな流れで用いる場合があるほか、シューティングテーパーのランニングラインとして使われます。
- ダブルテーパー(記号:DT - Double Taper): ライン中間部位はレベルライン同様で、両端とも先端に行くほど細くなるシンメトリーなテーパーを持つラインです。非常に使いやすい基本的なテーパーと言えます。特にロールキャストがしやすく、またウェットフライやストリーマーを流れの中で使う場合にはラインコントロールのしやすさが重宝します。一方ドライフライの場合、ライン中間部位(レベルラインの部分)が太くて水流抵抗を受けやすいためウェイトフォワードに比べるとドラグがかかりやすいともいえます。
- ウェイトフォワードテーパー(記号:WF - Weight Forward Taper): 名前の通り重量が前のほうに集中しているテーパーデザインです。つまりラインの先端部分(ヘッド)が重く(太く)それ以降の中間部(レベルライン部分)は細くなっているため、遠投性能に優れます。このウェイトフォワードテーパーには多くのバリエーションがあります。
その他に特殊なテーパーとして、シューティングテーパー(記号:ST - Shooting Taper)があります(シューティングヘッドとも呼ぶ)。ウェイトフォワードテーパーのほぼ先端部分のみであり、全長も9m程度です。これにランニングライン(シューティングラインとも呼ぶ)として細いレベルラインを繋ぐと遠投性能に非常に優れたシステムとなります。
このシューティング・システムは使い方を選ぶと非常に有効で、例えばフライリールにはランニングラインのみ巻いておいて、シューティングヘッドを何種類(フローティング、シンキングなど)か用意しておくと釣り場の状況に応じてヘッドの交換だけで釣りの幅を広げることが可能となります。
湖や海などでシンキングラインの釣りを好む方にはこのシューティングシステムの愛好家が多いようです。
近年世界中で人気が高まっているコイのフライフィッシング。 6~8番ウェイトでパワーファイトが楽しめます。 |
【シンキングラインについて】
シンキングライン(記号:S - Sinking): 沈下速度(シンク・レート Sink rate)の違いによってタイプが分かれています。
- インターミディエイト(記号I - Intermediate): 正確にはシンキングラインではありません。かといってフローティングでもなく、浮かず沈まずのサスペンド(水中に漂う)状態の比重を保つラインです。ドライフライやシャローエリアを釣る場合において、フライラインを沈めたくは無いけれど波やうねりのフライラインに対する影響を少なくしたい時に用います。
- タイプⅠ(記号:Type #1): 沈下速度1.25~1.75インチ/秒(≒3~4.5cm/秒)。水面直下や水草などの藻面を釣る場合に用いる。
- タイプⅡ(記号:Type #2): 沈下速度2.50~3.0インチ/秒(≒3~7.6cm/秒)。最も一般的に用いられるシンキングラインで1.5~4.5m程度の深さまでを釣るのに適しています。
- タイプⅢ(記号:Type #3): 沈下速度3.50~4.0インチ/秒(≒8.8~10cm/秒)。速い流れの中や7m程度の深さまでを釣るのに適しています。
- タイプⅣ(記号:Type #4): 沈下速度4.25~5インチ/秒(≒10~12cm/秒)。大きく速い流れの川や特に深いエリアを釣る場合に用います。
- タイプⅤ(記号:Type #5): 沈下速度5.25~6。0インチ/秒(≒13~15cm/秒)。サーモンやスチールヘッドフィッシングに用います。
- タイプⅥ(記号:Type #6): 沈下速度6.25~7.0インチ/秒(≒15.8cm~17cm/秒。深く早く沈ませる場合に用います。
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ブラックバスを釣る時は6番から8番ウェイトが一般的。 ウェイトフォワードテーパーがオールラウンドですが、ポッパーや バスバグ等の大型フライを使うときはバスバグテーパーが便利。 |
【フライラインを選ぶ際の要点】
言うまでもない事ですがビギナーがまず最初に必要なのは最も一般的なフローティングラインです。
フローティングラインさえあれば、とりあえずはフライフィッシャーマンの力量に応じて淡水でも海水でも、多くの異なる魚種を狙える上、ドライフライやポッパー、バグフライさらに水面下のニンフやウェットフライ、ストリーマーまで使えます。
また当然ながら常に水面に浮いているフライラインなので例えフライを見失ってもフライラインの伸びる方向からある程度の予測をつけることも可能です。
まずはフローティングラインでフライフィッシングに慣れることが大切でしょう。
蛇足ですが、例え湖の釣りであってもフローティングラインしか使わないことをポリシーとするベテランフライフィッシャーマンも少なくありません。
またラインウェイトについてですが、これを決める要因として次の1~3の要素が考えられます。また近年フライフィッシングのフィールドが広がり、道具類の細分化が図られるにつれ4番目にあるラインの化学的特性についても重要視されています。
- 1.フィールド(釣り場)の特性1: 渓流のように狭くロングキャストを必要としないフィールドでは5番ウェイト以下の低番手が、河川の本流や湖のようにロングキャストが必要な場合は5~8番ウェイトの中番手以上が必要となります。また強風の中ではそれなりにラインウェイトがないとキャスティングがままならないことあるので強い風が吹くフィールドや海では8番ウェイト以上が有効となります。
- 2.フライサイズとの合理性: やはり小さなサイズのフライには相応のライトウェイトが好ましいでしょう。これはリーダーシステムと一体で考える必要がありますが、仮に20番サイズのフライでミッジングをする場合、ティペットは太くても6Xとなります。このリーダーを8番ウェイトで使うとなると、余程注意深く扱わなければなりません。フォルスキャスト中のわずかなテイリングでもティペットは切れてしまう可能性がありますし、仮に魚をヒットさせたとした場合、8番ウェイトのラインが受ける水の抵抗にティペットが負けて切れるリスクもあります。したがって小さなサイズのフライにはライトウェイトが合っているといえます。一方大きなフライの場合はその逆と言えます。ブラックバスなどを釣る時に顕著なのですが、1番サイズのバスバグやポッパーなどはフライの空気抵抗が大きく6番ウェイト程度ではまともなキャスティングができないこともあります。やはり使うフライが大きく重たい場合はフライラインのウェイトもそれに倣う必要があります。
- 3.魚との相性: 単純に釣ろうとしている魚が小さいのならライトウェイトで、大きい魚を釣ろうとしているならヘビーウェイトのフライラインとなるのは想像に難くないと思います。またご存知のようにフライラインは他の釣り方に比べ太く重いラインを使うため、フライライン自体が魚にプレッシャーを与える可能性もあります。そこで釣り人が多くプレッシャーの高いスレたフィールドではよりライトなラインウェイトが好まれることも記しておきます。
- 4.フィールド(釣り場)の特性2: 一般的に広く使われているPVC製フライラインは冷やすと硬くなり温めると柔らかくなると言う特性があります。そこで予め硬め/柔らかめのフライラインを作っておくことでフィールドの環境に適合させるようにもなっています。一般的な「フレッシュウォーター用」以外に「ソルトウォーター用」、「コールドウォーター(寒冷地域)用」、「ウォームウォーター(温暖地域)用)などがあります。大雑把な特性としてはソルトウォーター用とウォームウォーター用は硬めのライン、コールドウォーター用は柔らかめのラインと言えます。シーズン初期の雪が舞うような天気の中ではフライラインが硬くなりキャスティングに支障をきたしがちです。そこで柔らかめのラインが好まれます。逆にソルトウォーターや暖かいシーズンの釣りではフライラインの張りがなくなり扱いにくくなる場合があります。そこではやや硬めのフライラインが適していると言えます。
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サンゴの海をウェーディングで釣る。 ソルトウォーター用8番ウェイトのインターミディエイドラインが便利。 |
以上全て覚える必要などもちろんありませんが、知識として知っておくと実際の釣りの幅も広がるのではないでしょうか。
逆に言うと、フライラインの種類の多さやそれぞれの特性を理解すると、「1-04. フライラインについて」のなかで紹介したことについてより深く理解できると思います。
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