2018年8月23日木曜日

ベルギー釣行③「いよいよ実釣!」編

 前日。ケルンからベルギーの特急タリス Thalys(車内食付き一等車!)に乗りリエージュへ。さらにローカルに乗り換えナミュールを経由して目的地最寄りのルスタンに着くと、そこは想像以上に何もない駅で少々焦りました(汗)。
 カフェが無いのは仕方ないとしても、タクシーもなく、電話もなく、当然Wi-Fiもない、本当に何もない無人駅でした。これじゃホテルへ辿り着けないじゃないか!


 しばらく右往左往した末、同じ電車で降りて駅で迎えを待っているらしい高校生くらいの若者に事情を話してタクシーを呼ぶ手段がないか尋ねていると、そこへ彼の迎えの父親登場。「それならホテルへ送ってやるよ」となり、まったくのラッキーで事なきを得たのでした。
 この親切な父親登場だけでもかなりミラクルなのですが、実は翌日にそれに輪をかけたサプライズが待っていました。


 当日、約束の午前9時にホテルに迎えに来てくれたガイドのセバスチャンの車で釣りをするプライベートリバーへ行くと、その川の所有者が挨拶に出てきて僕の顔を見るなり「お前さん、東京から来たんだって?昨日はホテルに車で送ってもらったんだろ?」
 僕が呆気に取られていると、「お前が声を掛けた若いのは俺の孫なんだよ!(笑)」とのこと。
 まさにアンビリーバボーですよ。まぁ逆に言うとそれくらい小さな街だってことなのかもしれませんが、それにしてもミラクル。
 だから旅は楽しい。


 さて、そんなこんながありながらも、いよいよフライフィッシングの時間です。
 ベルギー(もしくはこの州)のライセンスは1年間用か15日間用の2種類だとのことで、当然ながら15日間用をガイドに用意してもらいました(26ユーロ)。
 釣りをするのは1日なので少々もったいないですが、仕方ありません。


 最初の川ではブラウントラウトとグレイリングを狙います。
 川の印象はまさに桂川忍野を広くしたようです。時折瀬があるものの、基本的にはゆったりした流れが蛇行しつつ展開されています。
 ライズはないものの、水中をクルーズする魚は目視できます。


 ちなみにこの日の釣りはほとんどの時間で、魚を目で確認してからガイドの指示でフライをプレゼンテーションするサイトフィッシングでした。基本的には一日中全てそれです。徹底していましたね。例外は午後、とある瀬でチェコニンフをやった時くらいです。


 そしてパラシュートスタイルのドライフライで最初にヒットした魚が小振りのグレイリング。
 小さいながらも生まれて初めて釣った魚なので非常に満足です。
 そしてもう一つ蛇足ですが、フライもほとんどの時間、ガイドが用意しているものだけを使いました。最後の小一時間くらい「自分のフライを使いたい」と(ちょっと強く)主張して我を通しましたが、基本的にはガイドのフライでガイドの言う通りに釣る、と言った感じです。


まぁしょうがないですね、ガイドフィッシングですから。
 僕が日本でガイドをするときは、基本的な傾向とお勧めフライは渡すものの、アングラーの好みに任せる部分が多いのですが、これはガイドの方法論もまたそれぞれだということでしょう。


 またついでにもう一つ面食らったことを言うと、フライの流し方について。
 ナチュラルドリフトが基本なのは同じですが、日本でよくやるようにラインスラックをわざと作ってキャストすると「ストリップして!ラインがフライまで一直線になるようにして流すんだ!」とアドバイスされました。
 確かに緩やかな川なのでそれでも一応ナチュラルドリフトはしているようですが、気を抜くと癖でついついスラックを出してしまい、その度に注意されました(苦笑)。
 これもところ変われば、なのかもしれませんね。


 さぁ、そして最初のグレイリングを釣った直後、いよいよ気分も乗ってきたという時に、何と今度は上流からカヤックの集団がドンブラコ~ドンブラコ~。。。
 これにはさすがにガイドも苦り切った顔で「別の川へ行こう」。
 「賛成。アイ、アグリー I agree.」。


 実は移った先も同じ川なのですが、車で小一時間ほど走った上流になります。そして川の所有者も異なるとのことでした。
 またこの流れのさらにほんの少し上流にはベルギー王室の別荘(城)があり、王室専用の釣区間もあるとのことです。当然、専用の河川管理人(リバーキーパー)もいるとのことです。また、毎年何人か、この区間のロイヤルフィッシュ(と呼んでいた)を狙って密漁する釣り人が摘発されるとのことでした。


 ここではトラウトとグレイリングの他にシャブ(英語ではチャブ Chub)も釣れるとのこと。
 実際、川岸から覗き込むと50cmはあろうかという大きな魚影が泳ぐのが見えました。
 流れの非常に緩いポイントなので、ニンフを鼻面へ流し、または少しづつリトリーブして釣ります。当然サイトフィッシングです。
 ユニークなのは僕はウェーディングして釣っているのですが光の加減や角度などであまり魚が良く見えません。そんな時ガイドは1mくらい高い岸へ上がり、そこから「あそこへキャストしろ。もう2m先へ」などと指示し、また魚の動きとフライを確認しながら「リトリーブ」や「プルアップ!(合せろ)」などと合図も寄こします。
 つまり僕自身は魚が見えないままガイドの指示に従って釣りをするという、これまた不思議な釣りでした。
チャブの魚影は濃く、いくつものスクールが入れ替わり捕食にやって来るようで、ここでは何尾かのチャブを釣ることができましたが、いずれも大型はヒットしませんでした。


続いて瀬のポイント。ここではいかにもと言ったポイントでブラインドでドライフライを流しましたがストライクにフッキングせず悔しい思いをしました。
 そこでフライを黒い小さなストリーマーに変えクロスストリームで流れを横切らせると、この日一番美しいブラウントラウトがヒットしました。


 実はベイトフィッシュが非常に多く岸寄りに群れていたので、この川の魚はトラウトに限らずチャブを含めてフィッシュイーター化しているのかもしれません。実際、チャブが岸際でボイルしている光景も何度か見られました。
 そこでルアーやエサで釣ることもあるのかと聞いてみたところ、「そういうこともあるけれど、この川はプライベートリバーだからフライフィッシング以外はできない」との答えでした。


 ちなみに現地ではエサ釣りは「コースフィッシング Coarse fishing」または「ベイトフィッシング Bait fishing」と呼ぶのですが、ルアーフィッシングのことは「スピニングフィッシング Spinning fishing」と呼んでいました。


 ここでランチタイム。サンドイッチの他にオリーブの実とカットチーズ、さらに彼の庭で栽培しているという数種類のミニトマト。ミネラルウォーターとホットコーヒー、チョコレートもありました。
 木陰に腰を下ろして対岸でチャブがボイルするのを見ながらのランチは、川風が心地良くこれだけでも楽しかったです。


午後の部再開。流れのヨレを狙ってニンフを流すと良く小さなホワイトフィッシュの幼魚がヒットしました。
 ドライフライでも、日本ではオイカワやアブラハヤがフライをつつくようにこの魚が当たってきます。


そしてちょっと水深のある瀬のポイントで「チェコニンフを試そう」と近年話題のニンフィングを伝授してくれました。
 要は昔懐かしい「脈釣りニンフ」なのですが、ヘビーウェイトのニンフを流れの底を転がすイメージで釣る方法です。肝は余分なライン、リーダーを出さず、水に浸けずに竿先を流れのスピードに同調させて上流から下流へ探る、と言ったところでしょうか。
 トラウトではなく、チャブが釣れました。


 そしてそのポイントの先に良いプールがあるなぁと思っていたら、突如そのプールにわらわらと子供と中心とした5,6人のグループが登場してそこで泳ぎ始めたのでした!
ガイド曰く「この川で泳ぐ人は珍しいことじゃない」とのこと。
 実際、その後車で移動中に別の場所でも川で泳いでいる人たちを見かけました。
 写真でもわかるかもしれませんが、流れが緩やかな分、森の落ち葉が堆積しタンニンが流れ出しているようで茶色っぽい色をしています。汚れている訳ではありませんがなんとなく顔を付けるのは抵抗あるような・・・と感じるのは文化・慣習の違いなんでしょうね。


 この時点で夕方6時くらいです。この後、最初の川へ戻ってイブニングライズを狙おうということになりました。

 河畔林の一本の木にビーバーの仕事を発見。途中で断念したのか、それとも今後の仕事は続くのか。

 ちなみにヨーロッパの夏は大体どこも夜10時くらいまで明るいのでイブニングが一体いつなのか良くわかりません(笑)。


 さすがにもうカヤックがやって来ることはなく、落ち着いた静かな流れが待っていてくれました。流れを注視するとトラウトの姿が確認できます。
 ガイドのセバスチャンは「ちょっとライズを待とう」というとビールとグラスを取り出し、ランチの残りのチーズを勧めるのでした。
 「グラスに魚が描かれているだろ。これはトラウトなんだ。昔、お姫様が金の指輪を川に落としてしまった。ところが一匹のトラウトがその指輪を咥えてお姫様に返してくれたんだ。中世の言い伝えだよ」と、そんな話を聞きながらベルギービールを楽しむのもまた彼の地のフライフィッシングの楽しみなのかもしれません。


 ここでも大型の魚は釣れませんでした。
 いや、ヒットはしたんです。狙い通りのライズで、自分のドライフライでしっかりヒットしたんですよ。目測で40cmはあったと思う。が、やっぱり逃げられちゃったんだな。フックオフ。。

 一日を通して、真夏のドピーカンだったからコンディションも厳しかったし、いわゆるローウォーター(渇水期)なので時期的な難しさもあった(とガイドは言っていた)。
 悔しさが全くないわけじゃないけれど、楽しかった。色々勉強にもなった。もう一度、この地でフライフィッシングを楽しむチャンスがあったら今度は色々対応できると思うし、また是非リトライしたいな。


最後にタックルについて少々。ロッドは7ftを持って行ったのだけれど、やはりちょっと短かったです。流れが緩やかな分、ロングキャストが必要なシーンもあるので9ftくらいあっても良かったと思う。
 ラインは当初予定していた(いつもの)3番ではなく、予備で持って行った5番ラインを使いました。ガイドは「6番がベストだ」と言っていましたが。
 フライは「夏だから大型テレストリアルでガツンと・・・」みたいな考え方はあまりない様で、ローウォーターゆえに黒っぽくて小さい(16番以下)フライが多かったです。

 ちなみにピークは5月だ、とのことです。ほんの10日間くらいだけれど、まさにビッグメイフライのハッチがあって大型のトラウトがドボンドボンライズするんだとの由。
 日本のモンカゲロウに相当するのかもしれませんね。


 さて、皆さんの夏休みはいかがだったでしょうか?

 帰ってきたばかりでなんですが、気が付けば日本の渓流シーズンはあと残り1か月強。ラストスパートに向けて準備を進めるとしましょう。Tight line!

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ベルギー釣行準備①「紆余曲折の釣り場探し」編
ベルギー釣行準備②「旅の道具はコンパクトが基本」編
ベルギー釣行③「いよいよ実釣!」編(当ページ)

*姉妹ブログ The Incomplete Angler にて、より旅に焦点を当てた「ベルギーの鱒釣り」をアップロードしています。よろしければちょっと視点を変えた旅のレポートもご覧ください。

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