湖の釣りでは水面に落ちて溺れるセミを良く目にします。 |
セミはアメリカやヨーロッパ、ニュージーランドなどフライフィッシングの盛んな地域でもしばしば話題になりますが、どうやら日本のように多くの種類が同時に観察されることは少ないようです。
北海道から沖縄・八重山諸島まで夏になると実に多くの種類のセミを見ることができるのは貴重なのかもしれませんね。
フライフィッシングでも昔からセミを模したフライは用いられてきましたが、前述のように海外ではそれほど話題になる対象ではなかったためか発展的なパターンとはなりえていませんでした。
近年日本のフライフィッシング・シーンでセミが注目されるようになったのは「イワイシケーダ」の公開によるところが大きいと思います。
僕自身もセミには注目してきましたが、それはトラウト用のフライというよりは、ルアーフィッシングの延長としてのバス用フライでした。
ご存知のようにルアーフィッシングの世界では主にブラックバス(ラージマウスバス、スモールマウスバス)を対象にセミをモチーフとした多くのルアーが販売されています。
現在僕のタックルボックスに入っているセミルアーたち。 |
果たしてオリジナルがセミを意図していたかどうかは分かりませんが、現在僕らの目には実に優秀なセミルアーとして映ります。
どちらを使うかはアングラーの好みによって分かれますが、セミに近いのはどちらかというとクローラーなのではないかと僕自身は考えています。
水面に落ちたセミを観察すると、落ちたばかりの時は必死に羽を激しく動かして水面に強い波紋を生じさせるのですが、その動きに対してまったくと言っていいほど移動はしません。
同じ場所でバシャバシャと、沈みこそしないもののまさに溺れているといって良いように思います。
そういう「動き」はクローラーの方が近いのかなあと思う次第です。
静止した状態での見た目というのはあまり関係ないのではないかというのが僕の推測です。皆さんはどうお考えでしょうか?
本物(中央)と偽物(笑)。 左端はバスフライ「オリジナル・フロッギー」のプロトタイプ。 |
さて、今度はフライフィッシングの立場でセミを考えると、ルアーのようにフライ自身の「積極的な動き」でセミらしさをアピールすることは困難ですね。そこで僕のバス用セミフライへのアプローチはラバースカートによるざわざわした水面の動きでした。
「オリジナル・フロッギー」はポッパータイプのフライですが、木製或いはプラスチック製ヘッドのハードポッパーと異なり、大きなポップ音をたてるためのヘッド(ボディ)ではありません。もちろん強く短くリトリーブすることによりポップ音を発することは可能ですが、それとは別にラバーレッグによって水面を動かすアクション、静止時においてもゆらゆらと揺れるアピールを目的としています。
実は何人かの方からフロッギーに一般的なポッパー同様にラバーレッグ代わりのウィング(羽)・レッグを付けて欲しいと依頼されたことがあります。しかしキビキビとしたアクションを目的にするならハードポッパー(それもなるべくヘッドの軽いもの)の方が向いています。フォームポッパーにはフォームポッパーのメリットがあるので、(それがセミのイミテーションかどうかにかかわらず)是非ラバースカート(レッグ)のアクションとアピールを楽しんでくださいとお伝えしました。
これでお分かりいただけたでしょうか?「フロッギー Froggy」と名付けてはいますが、特にカエルを意図した訳ではなく(もちろんモチーフとしてはいますが)ハードポッパーとは異なるアピールのフライをデザインすることがこのフライの目的でした。
ヘアウィングを備えたフォーム・シケーダ。 |
しかし、もちろん「フロッギー」は特に強くセミだけを意識した訳ではありません。前述の通り、その目的はバスフライの可能性を広げることでした。
より強く「セミ」を意識したのは昨年「フォーム・シケーダ」を巻いた時です。
こういう大型フライを巻くときはショートシャンクでワイドゲープのフックにエクステンションボディを使いたくなるのですが、エクステンション部分のボディ素材を工夫しないととても満足のいくフッキングは望めないと思います。そこで僕のフライではストリーマー用のロングシャンクフックを用いてボディがそのシャンク内に収まるようにデザインしました。これにより大幅にフッキング性能は改善されています。
蛇足ですがもちろんこれ以前にも春ゼミを意識したフライの使い方はあって、その時は(フロッギーは別として)エルクヘアカディスを流用していました。#8くらいのフックにエルクヘアのウィングを長めにつけて使っていたのですが、この時に気づいたのは水面にポカリと浮いたフライが風などに揺れたりするとヘアウィングが微妙に水面をかき乱すことがあります。その感じがいかにも溺れるセミの羽ばたきや、他の大型昆虫の動きに似ていることです。
そういった経験をもとによりアピールが大きくアンシンカブル(不沈)なフォームボディとヘアウィングによる「フォーム・シケーダ」が生まれました。
フォームシケーダにヒットしたイワナ。 2015年夏の福井遠征にて。 |
そのフォーム・シケーダでは昨年(2015年)、スモールマウスバスはもちろん渓流のイワナまで釣ることができたのですが、2016年バージョンはよりファンキーなデザインにしてみました(笑)。
基本的な構造・サイズはそのままにヘアウィングをシリコンラバー製のウィングに変更させています。保守的なスタイルが好きな方には敬遠されてしまうかもしれませんが、それはフォームボディを使っている点で一緒なので、むしろマテリアルをケミカル素材に統一してしまうことでよりポップな方向に進むことができたと思っています。
もちろん万人受けするフライでないことは確かですし、トラウト狙いでは少々恥ずかしい気もしますが(笑)、フライの完成度としては高まったと自負しています。
「マダムX」風にウィングとは別に同じくシリコンラバアー製のレッグもセットしているので、アピールの点でも或いは水面でのスタビライザーとしても機能して安定性が増しています。
よりアピールを増すのであれば、背中のウィングを解いて1本1本ばらけさせることで対応もできます。
何より可愛くて楽しいでしょ!(笑)
ネームは「ポップン・シケーダ Pop'n Cicada」です。
湖でも渓流でも、バスでもトラウトでも、或いは南の海でテッポウウオ狙いでも(?!)可能性を限定せずになんでも釣ってみたいな、と思っています。
「ポップン・シケーダ Pop'n Cicada」フライボックスに一匹、いかがですか?(笑)
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