2016年6月17日金曜日

ブラックバスにはショートロッドが有効か?

先日、このブログでも紹介した通り今年も福島・裏磐梯の桧原湖でブラックバス(スモールマウスバス)のフライフィッシングを楽しんできました。
毎年、その桧原湖遠征の帰路には温泉に入ってくるのですが、その露天風呂で釣行メンバーが車座になってがやがやと無駄話に興じているときに、ふとフライロッドの長さが話題になりました。

1950年代製8フィートのバンブーロッドとシルクラインを使ってバスフィッシング!

その露天風呂に限らず(笑)、もうずいぶん昔から「バス用フライロッドは短い方が良い」というのが都市伝説的にまかり通っています。これは本当に事実なのでしょうか?


確かにこれまで日本のいくつかのメーカーから「バス用」と銘打ったフライロッドが販売されてきましたが、いずれもレングスは短めのものが多かったように思います。
そしてその理由はというと、概ね次の通りとなるようです。

  • バスを釣るのにロングキャストはいらないから、ショートロッドで十分。
  • 湖面にオーバーハングした木の枝の下、奥へフライを送り込むにはショートロッドでないと無理。
  • ビギナーに長いロッドは扱いにくい。
しかし僕の個人的な意見を言わせてもらうならば、これらは別にショートロッドにこだわる理由にはならないと思うのです。
・・・おっとその前に、それではショートロッドというのは具体的にどれくらいの長さなのかを明確にするべきですよね。
一応、「ショートロッド派」の言い分やマーケットを俯瞰して、8フィート未満としましょうか。ま、それでも6フィートと7フィート6インチのロッドでは使い勝手にだいぶ違いが出るとは思いますが、湖の釣りと言う意味では仮に7フィート6インチでも十分短いといえますから、ここでは8フィート未満をショートロッドと呼びたいと思います。

バスフィッシングする際のいつもの相棒タックル。
70年代前半に作られたABU社の8’6’’グラスロッド。

【反証1】
まず「ロングキャストがいらないからショートロッドで良い」というのは消極的な理由ですよね。別に長い竿でもショートキャストはできますから。
でもこれが「ショートレンジを正確にキャストする」となると少々意味が違ってきます。確かにロッドの長さによってキャスティング精度とキャスティング距離とのバランスに差が出てきます。
一般的にショートロッドよりロングロッドの方がキャスティング(遠投)能力が高い訳ですから、遠くのポイントに正確にフライをプレゼンテーションするにはショートロッドはロングロッドに及びません。一方、極端に短い距離ではロングロッドではキャスティングしにくいというのも確かです。
ただし、明らかにショートキャストを多用する釣りと言うのは、ボートを用いている場合だと思われます。そうであるなら8フィート以上、9フィート程度のロングロッドを使ってもそのロッドレングスでキャスティングしやすい/精度を高めやすい距離までポイントから離れれば良いだけです。
狙うポイントへ近づくのも離れるのも、ボートの操船としては手間は一緒です。

【反証2】
「湖面にオーバーハングした木の枝の下の隙間にフライをキャストする」この理由ならショートロッドに一定の理解が得られそうですよね。ただし実際はロッドの長さというよりはキャスティングの習熟度の問題になるのですが。
木の覆いかぶさった水面上のわずかな隙間にフライを通そうとする場合、どんなに短いロッドを使ってもラインループの幅に大きな違いは出ませんからオーバーヘッドキャストでは無理です。基本はスリークォーターキャスト、またはサイドハンドキャストが必要となります。
逆に言うと、サイドハンドキャスティングで正確なポイントを狙う技術さえ持っていれば、ロッドの長さにとらわれることなくオーバーハング下のポイントが狙えるということになります。

【反証3】
ビギナーはどちらにしてもそれなりにフライキャスティング練習をしなければならないので、短い方が良い理由にはなりませんね。もちろんいきなり10フィート以上の長すぎるロッドを使うのはどうかと思いますが、あえて短いロッドを選択する理由になるとは思えません。(ただし渓流用ロッドとして考えるなら8フィート未満が必ずしもショートロッドというカテゴリーになるわけではありません。)

***

以上を考えると、ショートレンジのポイントだろうが、オーバーハング下のポイントだろうが、はたまたビギナーを考慮したキャスティングのしやすさの問題だろうが、ロッドの長さはあまり関係ないということになるのではないでしょうか。
そうだとするならば、基本的なキャスティング能力に優れるロングロッドの方が一般的に有利なのではないか、というのが僕の意見です。

そうは言っても実際バスフィッシングの母国である米国のS社やS社(まぎらわしいな、笑)はバス用ショートロッドを作っているじゃないか!との反論もあるでしょう。

その理由も明快で、主要なバスフィッシング・トーナメントのレギュレーション(規則)に「ロッドレングスは8フィート未満」とする規定があるからにほかなりません。(*B.A.S.S. にはあるが、FWL には規定なし。その他トーナメントにもこの規定がある場合が多い。ちなみに日本のW.B.S. にも同様の規定があります。知ってましたか?)

少々意地悪なうがった見方をするとトーナメント・レギュレーションという大きな理由を知らないで(或いはあえて隠して?)ショートロッドの方が良いという雰囲気作りをしているようにも思えます。
ひょっとしたらトラディショナルなトラウトフィッシングとの違いを際立たせることが「ショートロッド有利」説の目的になっているのかもしれません。

2014年カナダでバスフィッシングした時
9フィート、6番のグラファイトロッドでした。

ここで一つメールのやり取りを紹介したいと思います。
米国の主要フライフィッシングカンパニーの一つ、SAGE社へ直接問合せたメール(2016/06/15)です。

Q.(僕) 御社はあえて7’11’’の『バス用フライロッド』を作っていますが、トーナメントのレギュレーション以外に何か理由があるのでしょうか?実際のところバストーナメントでフライロッドを使う人はほとんどいないと思うし、8フィート以上のロングロッドの方が実際の釣りでは有利な場合が多いと思うがどうお考えですか?

A.(Sage担当者) あなたの問いかけは正しい。私たちが作る7’11’’のバスロッドはまさにナショナル・バストーナメントに適合させて作っている。そしてトーナメントにフライロッドを使うことが多くないということについてもまた、あなたは正しい。ただし、少ないけれど「フライ志向のトーナメント fly oriented tournament」が行われる州があるのも確かだ。私はルアーとフライを同時に準備しているトーナメントアングラーを実際に何人か知っている。
 またラージマウスバスの場合、ヘビーカバーを撃つ釣り方が必要になることが多い。そんな時ショートロッドは優れた「ポケット・シューター pocket shooter」となり、またヘビーカバーのランディングでは短くて「強い」ロッドが有利だと考えている。
 もちろん9フィートのロッドで同じようにロッドを操作できるだろうということは理解できるが、我々は以上の理由からバスロッドを作ってきました。
(真摯に対応していただいたSAGE社の担当者アンダーセン氏に感謝いたします。ありがとうございました。)

メールの原文を紹介することは控えますが、なかなか面白い回答を得られたと思います。
つまり最大の理由は僕が予想した通り、トーナメントレギュレーションに合わせることだったわけです。実際にトーナメントで使われることもあるのだと言っていますから、興味深いですね。
もう一つヘビーカバーでのランディングというのは僕の視点からは抜けていました。確かに米国のバスフィッシングビデオなど見ると日本では雷魚を釣るようなヘビーカバーのロケーションでバスを釣っているシーンも見られます。短くて強いというロッドが求められる理由に不足はないでしょう。

さて、ここまで僕自身の経験と考察に基づいてブラックバスのフライフィッシングにショートロッドが良いとされる都市伝説的な(?)風潮に疑念を呈したのですが、もちろんどんなロッドを使うのかは各アングラー自身の好みの問題と言えます。それでもショートロッドが好きだという場合もあるでしょうし、場合によっては広大なフラットウォーターをショアから超ロングロッドで狙うことだってないとは言えません(笑)。

アバクロンビー&フィッチのビンテージパックロッド「Passport」。
5フィート足らずのレングスで10ピースという天才ロッドです!

蛇足ですが、僕自身渓流のトラウトフィッシングでは5フィート、あるいはさらに短い極端なショートロッドで遊ぶことがあります。使い勝手そのものというよりも「遊び」としてのゲーム性の高さから選ぶことが多いというのが理由です。
フライフィッシングは趣味性の塊みたいなものですから、結局は「好き」な道具を使うのが一番なのかもしれませんね♪

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