2014年7月3日木曜日

夏の釣り?だからテレストリアルって何なのよ?

東京周辺でいうと、春の大型連休が終わる頃からテレストリアル・インセクトを意識して釣行するようになります。

フライフィッシングをしない方は「テレストリアル・インセクト terrestrial insect」なんていう舌を噛みそうな言葉を聴いても何のことか全くわからないかもしれませんが、なんてことはない「陸生昆虫」と言う意味です。

丹沢山塊近郊の川で流れてきたノコギリクワガタ。
紛れもないテレストリアル・インセクトですがトラウトのエサには・・・(笑)

ちなみにその陸生昆虫に対して、メイフライ(カゲロウ)やカディス(トビゲラ)、ストーンフライ(カワゲラ)など「水生昆虫」がいるわけですが、こちらは「アクアティック・インセクト aquatic insect」と呼びます。
別に英語にする必要もないのですが、やはりフライフィッシングが欧米(特にアメリカ)から伝わったが故にカタカナ言葉が多いことは否めませんし、また英語で伝わった概念は英語のまま受け入れてしまった方が理解が早いということも少なくありません。

渓流のトラウトフィッシングの基本はやはりメイフライ、カディス、ストーンフライといったアクアティック・インセクトの釣りとなる訳ですが、その基本については既に述べました。(「水生昆虫のライフサイクルをイメージしよう」参照。)


ここではそれらアクアティック・インセクトたちのハッチ(羽化)が減る夏季の釣りの方法としてテレストリアル・インセクト(陸生昆虫)を考えてみたいと思います。

冒頭に「春の大型連休が終わる頃からテレストリアル・インセクトを意識して・・・」と書いていますが、実際に明らかにテレストリアル・インセクトのパターンだと認識するのは6月後半頃からでしょうか。
その頃になると森の中で活発に昆虫が動き始めます。
思いつくままに挙げてみるとハチ、ハエ、クモ、甲虫、毛虫・イモムシ、バッタ、セミ、そしてアリ・羽アリといったところでしょうか。
特に雨の後には多くの陸生昆虫たちが流されることは想像に難くないと思います。

下の写真は先日(2014年6月29日)の桂川忍野で実際に流されていた甲虫です。
少々見難いですが茶色っぽい色合いで背中の羽が片方取れてしまった甲虫です。
テレストリアル・インセクトの場合、このように傷ついたり形が変形してしまっているものも少なくありません。


当然、その流され方も千差万別で、水面に浮かぶだけのもの、半沈みのもの、もちろん水中を流されているもの、或いはバッタのように足で水面を蹴って引き波を立てながら泳ぐように流されるものもいます。

とは言え実際の釣りではやはりドラグフリーでナチュラルに流すことが基本となります。
その点ではアクアティック・インセクトの釣りと一緒ですが、それでは違いは一体何なのかというと・・・
  • フライに決まった形がない。:ハッチ(羽化)の影響下にあるわけではないのでフライの選択肢が途方もなく多い。
  • ライズがあったとしても、その捕食対象の特定が難しい
  • 水生昆虫に比べ大型のものが多い。:キャスティングの習熟度にもよりますが、一般的に大きなフライはロングティペットリーダーや3番ウェイト以下のタックルでは正確なキャスティングが難しくなることが多いです
大きな違いはこんなところでしょうか。
逆に言うと、テレストリアル・インセクトの釣りは自由だ!ともいえます(笑)。
それにトラウトたちは決まった対象のみを食べているわけではないので、捕食されている虫と多少フライパターンが違っていても全く反応しないということは少ないと思われます。
そういう意味ではあまり難しく考えずに、まずは自分の信頼するフライを使ってみることです。

フォームビートルで釣った桂川忍野のレインボートラウト。

繰り返しになりますが、テレストリアル・インセクトをテーマにした釣りの最大の特徴は、良い意味でも悪い意味でもエサ/フライの大きさや形、色等の幅が非常に広いということです。
一方でこの時期のトラウトは秋の産卵へ向けて体力を蓄える必要があるために、大型の昆虫でも積極的に捕食します。
その意味ではフライパターンに神経質になることなく、むしろポイントへの正確なキャスティング、フライの流し方に注意するべきです。

以上の理由から、ビギナーの方が視認性の良い大き目のフライを用いてフライフィッシングの基本技術をマスターするには最高の季節といえます。

最後に私が実際によく使うテレストリアル・インセクト向けのフライを幾つか紹介しておきます。

ロイヤルコーチマン(#12,14)
特に何かの虫と言うわけではないのですがテレストリアルインセクト
の季節になると良く釣れる不思議な定番フライです。

コーチマン(#16)
ロイヤルコーチマンより小さいサイズではこのフライを良く使います。
ハチ、アブ、オドリバエ等のイミテーションとなるでしょうか。

エルクヘアカディス(#12,14,16)
説明するまでもない万能定番フライですが、カディスとは名付けられている
ものの十分テレストリアルフライとして使えます。陸生・水生昆虫を問わず渓流の
パイロットフライとして使っているベテランフライフィッシャーも多いようです。

ガーグラー(#12)
バッタ、セミ、甲虫など大型のテレストリアル・インセクト
全般に効果的です。

フォームビートル(#12,14)
甲虫類のイミテーションとして用います。
カラフルでポップなのが夏らしい?

フォームアント(#16)
アントと呼んではいますが、小型甲虫類の
イミテーションとしても使えます。
  
アント各種(#16~20)
実は渓流で目にするアリの数は非常に多いです。サイズの大小や
色(黒から赤っぽいものまで)も多岐に渡っているので、いくつかの
パターンを準備しておくことをお勧めします。
写真は一例としてウェットフライも載せていますが、スタンダード
やパラシュートなどの一般的なドライフライでも問題ありません。
特定のアリと言うより、アリっぽいものであれば十分なので、
グリフィスナットなどでも流用可能です。

以上、ドライフライに限定していますがテレストリアル・インセクトのパターンについて概略を説明しました。
実際は水面下を流されている昆虫も多いのでウェットフライも必要となる場合がありますが、まずはこれらドライフライに限っても夏の釣りを十分堪能することができると思います。

ロイヤルコーチマンで釣った日光湯川のブルックトラウト。

さあ、夏の渓流へ出かけましょう!


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