2014年8月10日日曜日

初めてのロッドを選ぶ【二人の選択】

今年に入ってからフライフィッシングをはじめたSNさんとNYさんのお二人ですが、先日お二人ともフライロッド(及び他一式)を購入されました。
それぞれ問われるままにアドバイスをしたのですが、フライフィッシングをはじめてから最初の釣竿を決めていくプロセスが興味深かったので、お二人には失礼ですがこれから購入を考える方の参考にもなるかと思い、簡単にご紹介したいと思います。



もちろんお二人の間に面識はありません。
偶然お二人とも今年になってフライフィッシングを初め、その最初のフィッシング(レッスン)に僕が立ち会いました。

共通点を挙げるとすれば(僕を含めて、笑)同世代で、またそれぞれ長くブラックバスを中心にルアーフィッシングを楽しんできたベテランアングラーだということ、さらにフライキャスティングのコツを飲み込むのが非常に早いということも、でしょうか。

□ □ □

【SNさんのロッド】
9フィート(4ピース)、5番ウェイト用。ミディアムアクション。

春、5月の忍野を釣るSNさん。

SNさんはロッドを購入するに当って非常に明確なビジョンをお持ちでした。
ロッド(及びフライタックル一式)を選ぶときに最も重要なことは自分の釣りをするフィールドにマッチしているかどうかですが、SNさんが当面のフライフィッシングをしたいのは桂川忍野やそれに類する川(つまり山岳渓流などではない)と、湖でのブラックバス(主にスモールマウスバス)とのことでした。

まず適用するラインウェイトの検討ですが、渓流域でトラウトを狙うとなれば一般的には5番ウェイト以下となります。
キャスティングスキルが足りていれば4番でも3番でも良いのですが、問題はもう一つの対象魚としてブラックバスを釣ろうとしている事です。

本格的な大型バスフライを駆使してフライフィッシングを楽しむには8番ウェイト以上のタックルが必要となりますが、どちらかと言えばラージマウスバスよりもスモールマウスバスの比重が高いようなので、それならばトラウトを狙うのに近く、比較的小型の#6フック以下のフライが多用されると予想されます。
小型ポッパーやガーグラーなどドライフライ(バス用トップウォーターフライ)を中心に湖でスモールマウスバスを釣るのであれば、トラウトタックルと同様の選択でOKです。
そこでラインウェイトは5番に決定。

次にロッドのレングスですが、これはまず山岳渓流がフィールドから外れているので8フィート以下は選択肢から外れています。
理論的にはロッドは長い方がキャスティングもメンディングなどのライン操作もしやすいのですが、あまり長すぎても慣れないうちは持て余したりトラブルが増えるでしょう。
ハンドリング(取り回しの良さ)を考えると短めの方が良いし、キャスタビリティ(遠投性能)を求めるなら長い方が有利どこにバランスを求めるかが悩みどころです。

蛇足ですが、なぜかバス用フライロッドと言うと、明快な理由も説明しないまま(?)ショートロッドが勧められる風潮があるようです。
木の枝の下にフライをプレゼンテーションするためにショートロッドを云々と説明する方もいらっしゃるようですが、ロッドを横に倒してサイドハンドキャストをすればロッドの長さは関係ありません。(ルアーフィッシングでもやりますね。)
もしサイドハンドキャストのスキルがないというのであれば、ショートロッドを使ったところで狭いラインループ(ナローループ)を作るスキルも十分でないでしょうから、いずれにしても枝をかわすことは難しいでしょう。

これは僕の想像ですが、米国のロッドメーカーにはバス用フライロッドと称してショートロッドを販売しているケースがあります。これはバストーナメントのロッドレングスの規定内に治めた長さ(つまりトーナメント・ルール)なのですが、この辺の事情を知らない(或いは何らかの思惑からあえて無視している?)人がトーナメントと関係ないところでも「バス=ショートロッド」と信じてしまっているからではないでしょうか。

蛇足のついでに言うと、フライは一般的なルアーに比べて非常に小さいですね。それゆえ一般的にはルアーよりもフライの方が繊細な釣りと考えられますが、ブラックバスの釣りは逆の可能性も考えられます。
つまりルアーでは小さなルアーを扱うためにはキャスティングの制限によってラインを含めフィネスタックルとしなければなりませんが、フライであればルアーより小さなベイト(フライ)をより太いライン(リーダー)で使うことができます。
例えば20ポンドラインで5g以下のルアーをキャストすることは非常に困難ですが、フライタックルならリーダーに20ポンドを使ってもルアーより軽いフライをキャスティングすることが可能です。
8番ウェイト以上のフライタックルでウィードレスに巻いたバスバグやポッパーをウィードベッドにキャストするアクティブでパワフルな釣り・・・ワクワクしませんか!

桧原湖(福島)のスモールマウスバス。

おっと、横道に逸れすぎてしまいました、失礼。
結果的にSNさんが選択したのは9フィートのレングスでした。
9フィート5番ウェイトのタックル。
渓流で20cm以下のヤマメを釣るのには面白味に欠けますが、大場所でニジマスをメインに狙ったり、湖でボート、カヤック、フロートチューブなどからバスを狙うなら非常に楽しめると思います。

ちなみにロッドアクションはミディアムです。
やたらロングキャストに拘るのでなく、ゆったりとキャスティングそのものを楽しみながら釣るにはピッタリだと言えます。
特に小型とは言えポッパーやバスバグなどのバス用フライは、一般的なトラウト用に比べ空気抵抗が大きく、重いものが多いためウィンドノットなどのライントラブルが発生しやすいと言えます。
それを避けるためには不要なフォルスキャストを廃し、またラインスピードを上げすぎないことが重要となります。
そんなキャスティングにもミディアムアクションはピッタリと言えるのではないでしょうか。

それ以外にもこのタックルなら湖でのライズフィッシングにもマッチしますね。
風が強い時は難しいかもしれませんが(もっともそんなときはライズもないことが多いですが)、そこそこロングキャストもできるので、ライズを探してドライフライで狙うドキドキのフライフィッシングもお勧めです。
SNさん、秋になったらカメムシパターンで湖のトラウトもいかがですか?!

(追記:同年9月、奥日光・湯の湖へブルックトラウトを釣りに出かけました!)

□ □ □

【NYさんのロッド】
8フィート(4ピース)、4番ウェイト用。ミディアムファストアクション。

夏、8月の忍野を釣るNYさん。

NYさんはどちらかと言うと渓流志向で、今のところバスフィッシングにまでフライで挑戦しようとは考えていないようでした。
もっとも本格的な山岳渓流でイワナやヤマメを追いかけると言うよりも、休日に忙しい日常を離れ、トラウトの泳ぐ美しい川でのんびりと釣りをする時間を楽しみたいということが当面の目的のようで、徐々に自分のスタイルを作っていこうとしているようです。

そこでお勧めしたのはキャスティングをしっかりとマスターするために極端な低番手は避け、しかし渓魚の釣り味は楽しめるように極標準的な渓流タックルである4番ウェイト用です。
レングスは、ロングキャストの必要はなく、かといって極端なショートロッドではキャスト時でもフライを流す時でもラインコントロールに難点があるので、やはり中庸と言って良い8フィートです。
またロッドアクションは全体の張りが強過ぎず、キャスティング時のラインの乗りを感じやすいミディアムファストアクションとしました。

渓流のヤマメ。

もっとも実際に使うフライラインは、まずロッドにラインの重みを感じてのキャスティングが確りできるように5番ウェイトをお勧めしています。
渓流ではロングキャストが必要ない代わりにピンポイントの精度が要求されます。基本に忠実に繰り返しキャスティング練習をすることで慣れて欲しいと思います。

先日、NYさんに直接お会いして今(盛夏)から禁漁が来るまでの間使うことが多いと思われるフライのセットをお渡ししました。
奥様のご実家に帰省し、その近くで早速渓流フライフィッシングに挑戦するとのこと。
釣れるか釣れないかは魚次第。まずはのんびりとフライフィッシングをお楽しみください!

(追記:埼玉県の自然渓流型管理釣り場「秩父フライフィールド」にて渓流釣りを堪能したそうです。)

□ □ □

ロッドを選ぶ際、一口にこれと決めるのは難しいものです。それが最初の一本であるならなおさらです。

ハウツー・フライフィッシング!」の中の「1-02.ロッドについて」や、さらに深く掘り下げた「4-01.フライロッドをもっと詳しく」などをご一読頂いた上で、ご参考にして頂けると幸いです。

もちろんロッド選びのポイントは十人十色。フィールドの条件(渓流、本流、湖等)やアングラーの身体的特徴(身長や腕の長さ、筋力等)に加え、ブランクやスレッドのカラー、グリップ形状といった見た目の好みも強く反映されるでしょう。むしろこちらを重要視するアングラーも多いかもしれません。
もちろん最も重要なのは懐具合ですが・・・。

米国人の友人マイクが自作したロッド。
ラスタカラーにスレッドを巻いたりして自由に楽しんでいます。
2本目以降のロッドは自作なんていうのもアリかも♪

道具選びもまたフライフィッシングの楽しみの一つです。
市販品から選ぶ以上は常に一長一短なのでベストなものを見つけるのは至難といえますし、現実的にはどこかで妥協点を探ることとなります。
しかしこの際大いに悩み、悩むことの楽しさ(苦しさ?)を満喫してください!(笑)
でもあまり悩みすぎてシーズンが終わっちゃわないようにお気をつけて!

もちろんお問合せいただければ可能な限りのアドバイスを送らせていただきます。
それではハッピー・フライフィッシング♪
paddlefreaks[at]gmail.com

3 件のコメント:

  1. 予想どおりSNさんもNYさんもフライフィッシングの不思議な魅力に取りつかれてしまいましたね。最近はルアーマンに比べてフライアングラーが少なくなってきていると感じていますので、大歓迎です!
    お二人とも初めての忍野ですれたトラウトをヒットさせるという方達ですし、どんどん深みにはまってください。
    ロッドの選択はお二人とも大正解だと思います。私が初めた30年前はフライ道具が少なく、とても高価の物でした。最初は比較的廉価なフェンウイックのグラスロッドを購入するのがやっとで、その後、徐々にオービスのファー&ファイン(7f11:4番)やオールラウンダー(8.6f:6番)を購入したものです。現在は忍野では8.6f:4番、管理釣り場では9f:5番、湖では9f:6番などを使っています。でも困ったことに、フライロッドやフライリールは常に他の物に惹きつけられるという魔力がありますのでお気をつけて下さい。

    返信削除
    返信
    1. 本当ですネ。何本持っていても常に違うものが欲しくなっちゃう・・・(笑)。
      セブンイレブン、オールラウンダー、いずれも誰もが憧れる名品ですネ!フェンウィックのグラスロッドも含め、今だにマニア垂涎のロッドばかりですネ!!

      削除
  2. このコメントは投稿者によって削除されました。

    返信削除

ブログ未更新のお詫び

いつも当ブログをご覧に頂き誠にありがとうございます。