2016年8月3日水曜日

イワナ釣り再び

2週間前に行った福井県のイワナ釣りに、またしても行ってしまいました!


岩を噛む清水、苔生す渓谷、多彩な緑のグラデーションを持つ森、そして地元で心からのホスピタリティを発揮してくれる釣友ひらさん。
越前の暴れ川・九頭竜水系のその渓流のことを、もうホームリバーのように感じつつあります。(勝手なこと言うな、との批判は無用にお願いします、笑。)

今回の行程も前回同様、釣りに当てたのは3日間です。1日目と3日目は同じ渓流で、2日目に隣接する藪沢源流を釣りました。

【1日目】
天気も上々。この川のエントリー付近にある林道の管理小屋に詰めているおじさんによると、この日は他に釣り人は入っていないとのこと。数日前に雨も降り、コンディションは良好。期待は膨らみます。


今回は東京から釣り仲間のNao氏が同行しました。氏のご両親は福井県出身とのことで、改めて話を聞くと我々が厄介になっているひらさんのお宅と同市であることも判明。
この日の夜は盃を傾けつつ、同市内の「あるある」ネタで大いに盛り上がったのでした(笑)。

ところで釣りの方ですが、釣り始めて30分くらいたったところでしょうか、俄かに雨粒が叩き始めたかと思うと、一気に豪雨に。。やがて雷もなり始め・・・、仕方なく川沿いの木々の下で雨宿りのため停滞。


一時間ほど経ったころ、空も明るくなり、ようやく小降りになったので釣りを再開しました。
透明だった流れは笹濁りになりましたが、この程度の夏の雨はむしろ釣りには良いくらいでしょう。雨が上がり、日が差すようになると思った通り魚の活性が上がったようです。
ヒットには至らないまでも、フライに反応して水面に浮いて来たり、激しくストライクする魚も現れました。 


そして気持ち良く釣れてくれたのはこの渓のアベレージよりは若干大き目かな、というイワナ。
今回も無事に出会うことができました。この一尾に感謝感謝!
ヤマメがヒットした後はスピードを生かして流れを奔るのに対して、イワナはそこそこの大きさになるとヒットの後その場でグッと堪えるように身を捩って抵抗します。その時の手元に伝わる野生の「重さ」がイワナを掛けたときの魅力でもあります。


蛇足ですが、この魚が針掛かりした後の引きというのは魚種によって違いがあり、この違いから魚を想像するのも楽しみの一つと言えます。
ニジマスやヤマメはヒットしたらすぐに素早く逃げようとします。
その後、ニジマスはジャンプをし、ヤマメはローリングで糸を体に巻き付けるようにもするので注意が必要です。


イワナは前述の通りですが、それに似た抵抗をするのはブルックトラウトとブラウントラウトですね。いずれも頭を強く振って抵抗するのですが、ブルックトラウトの場合、トラウトという名前であっても学名 Salvelinus Fontinalis を見るとイワナ(Salvelinus)の仲間であることが分かります。

一方、ブラウントラウトの学名 Salmo trutta には「サルモ」が入っている通り、これはアトランティックサーモン(Salmo Salar 大西洋鮭)の仲間であり、同じ外来鱒といえどもニジマス Oncorhynchus mykiss がパシフィックサーモン(太平洋鮭)の仲間であることとはちょっと異なります。
ついでながらヤマメ(サクラマス)の学名は Oncorhynchus masou であり、これも太平洋鮭の仲間を示す Oncorhynchus と日本語で「マス」の語感を持つ Masou が当てられています。


このようにまずイワナとマス(トラウト)との違いがあり、さらにトラウト(やサーモン)の中でも太平洋と大西洋とで区別されています。生物学的な分類が机上に収まっているだけでなく、釣りの最中のやりとりにまで影響していると考えると、とても面白いですね。


おっと、蛇足にふけっている間にまたまた強い雨が降ってきてしまいました(笑)。今度は先ほどよりさらに強く降っています。たまらず一度川を脱し様子を見ますが、先ほどの笹濁りはすでに見るも無残なドチャ濁りに変してしまいました。
Nao氏は雨降る前の数十分の魚の活性が非常に良かったようで、非常に残念がっていましたが・・・、一日目の釣りはこれまで。翌日以降に期待しましょう。


【2日目】
この日は前日の渓流に隣接する藪沢源流釣行です。藪漕ぎして、杣道を歩き、たどり着いた細流は小さな落差を繰り返しつつ山頂付近まで続きます。


途切れることのない沢の音と、濃密な空間。
各種の虫が、カエルが、マムシが、そして時に漂う獣臭。


こんな小さな沢ではあるけれど、時折エサ釣り師が訪れるらしく比較的大場所のポイントからはなかなか良い反応を得ることはできませんでした。


小さな巻き返しを丁寧に。時に岩の奥まで。
ほぼ全ての流域で蜘蛛の巣が張り巡らされ、まともにキャスティングできるスペースはありません。
ティップの操作で何とかラインを送り込み、時にボゥ・アンド・アロゥでフライを投射する。


苦心した末に姿を見せるビューティー。
何度も言うようですが、山奥の渓で出会うイワナは単なる魚とは思えません。人智を超えた森の精そのものと言って良いのではないでしょうか。


遡っても遡っても繰り返される藪沢の流れ。その行程のほとんどが両岸共藪で覆われているため、川通しで歩くしかないのですが、その沢も両岸から張り出す木々によって遮られることが幾度か。
身をかがめ、膝をつき、水面を這いつくばるようにして遡行するときに思うのは・・・、ここにだけはマムシがいないでくれ!(笑)


朝、釣り始めたのは8:30頃だったでしょうか、とどまることのない沢歩きを続け、15:00を回ったところで引き返すことにしました。安全に帰らなければなりません。

ちなみに何らかの理由で万が一その日のうちに戻ることができない状況に陥ったときに備えて、エマージェンシーブランケットをリュックに忍ばせています。また腰にはクマ除けのベル(賛否はあるものの、一応念のため)、首にはホイッスルをぶら下げています。これらは渓流釣行の3点セットと言って良いかもしれませんね。
いずれも前回の釣行時にひらさんからプレゼントされたものです。心配りに感謝!


夕暮れる前、太陽光が金色に輝くとき森の風景は一変します。どこの渓流へ行ってもそうですが、ここでもまた幸福で満たされる風景に包まれました。
この時間、この森の中でならたとえ妖精が現れても僕は何のためらいもなく自分の目を信じることができるでしょう。



【3日目】
釣行最終日は1日目と同じ渓へ。
この日は僕以外、この渓に釣り人は入らなかったようです。天気も良く、確かにイワナのコンディションは悪くありません。


僕がリラックスし過ぎていることも理由の一つだったのか、この日はよくばらしました(苦笑)。ティペットの傷や結び目のチェックが疎かだったせいもあると思うのだけれど、合わせ切れも何度かありました。
イワナには申し訳ないけれど、バーブレスフックだからすぐに外れてくれるでしょう。


それはそれとしても、魚が出るポイントは限られていたような気がします。
落ち込みの脇にある巻き返しは必ずチェックするイワナのポイントではあるけれど、この日はその巻き返しのさらに奥にある岩陰までフライを送り込まないとヒットしないことが多かったです。


この日、フライは14番のロイヤルコーチマン一辺倒でした。
夏になるとこのフライで釣りたくなるし、また事実このフライへの反応はすこぶるよろしい、とこれはひらさんとも一致した意見です(笑)。


もっともこれは、多分に思い込みも作用していると思うので、実際のとことはわかりませんし、今このレポートを書いていて思うのは、シケーダはまだしもフォームビートルなどは試しておけばよかったな、ということです。



やがて、タイムアップ。
今回も初日にまとまった雷雨があってどうなることかと思ったけれど、翌日にはほぼ元通りの透明な渓流に戻ったし、それ以外は日の光に輝く森や、なによりもイワナたちとの出会いを堪能することができました。


帰ってきたばかりだけれど、写真を眺めて思うのは・・・「また行きたいナァ♪」(笑)。
皆さま、夏のフライフィッシングをご堪能ください。Tight line!

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